特許活用ガイド

特許取得費用を80%削減!スタートアップ向け特許費用完全ガイド【2026年版】

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この記事のポイント

スタートアップ・中小企業が活用できる特許費用の軽減制度を徹底解説。出願料・審査請求料・特許料の具体的な金額と、最大2/3削減できる新減免制度の申請方法をわかりやすく紹介します。

「特許を取りたいけれど、費用が高くて手が出ない」——これはスタートアップや中小企業の経営者から最も多く聞かれる声のひとつです。

しかし実は、日本の特許制度にはスタートアップ向けの手厚い費用軽減制度が用意されており、条件を満たせば審査請求料や特許料を最大2/3(約67%)削減することが可能です。

本記事では、特許取得にかかる費用の全体像から、具体的な軽減制度の活用法まで、スタートアップの視点で徹底解説します。基礎知識については特許とは何か特許出願の費用と手順もあわせてご参照ください。

特許取得にかかる費用の全体像

特許を取得するまでには、大きく分けて以下のコストが発生します。

特許庁に支払う「官費」(法定費用)

特許庁への主な支払いは3つのタイミングで発生します。

1. 出願時

  • 出願料:14,000円
  • 電子化手数料(紙出願の場合):2,400円 + 800円×ページ数

2. 審査請求時(出願から3年以内)

  • 審査請求料:142,000円 + 4,000円×請求項数
  • 請求項が10個の場合:142,000円 + 40,000円 = 182,000円

3. 登録時(特許査定後)

  • 特許料(1〜3年分):毎年 4,300円 + 300円×請求項数
  • 請求項10個・3年分:(4,300 + 3,000) × 3 = 21,900円

弁理士費用(代理人報酬)

弁理士に依頼する場合の費用は、技術分野や内容の複雑さによって変動しますが、一般的な相場は以下のとおりです。

  • 明細書作成・出願手続き:30万〜50万円
  • 中間処理(拒絶理由通知への対応):5万〜15万円/回
  • 登録手続き:3万〜5万円

トータルコストの目安

通常、1件の特許を弁理士に依頼して取得する場合、総額50万〜80万円程度が相場です。自力出願の場合でも官費だけで20万円前後は必要になります。

新減免制度(2019年4月〜)の全容

2019年4月以降に審査請求をした案件には「新減免制度」が適用されます。旧制度と比べて手続きが大幅に簡素化されたのが大きな特徴です。

対象者と軽減率の一覧

対象者審査請求料特許料(1〜10年分)
中小スタートアップ企業1/3に軽減1/3に軽減
小規模企業1/3に軽減1/3に軽減
中小企業(会社)1/2に軽減1/2に軽減
中小企業(個人事業主)1/2に軽減1/2に軽減
研究開発型中小企業1/2に軽減1/2に軽減
アカデミック・ディスカウント1/2に軽減1/2に軽減
福島復興特措法対象企業1/4に軽減1/4に軽減
個人(市町村民税非課税者等)免除又は1/2免除又は1/2

特に注目すべきは、中小スタートアップ企業小規模企業への軽減率です。審査請求料・特許料ともに1/3に軽減されるため、通常の約67%の費用削減が実現します。

具体的な削減額シミュレーション

請求項10個の特許を出願した場合を比較してみましょう。

費用項目通常中小企業(1/2)スタートアップ(1/3)
出願料14,000円14,000円14,000円
審査請求料182,000円91,000円60,667円
特許料(3年分)21,900円10,950円7,300円
官費合計217,900円115,950円81,967円
削減額101,950円135,933円

スタートアップであれば、官費だけで約13.6万円の削減になります。

2024年4月からの件数制限に注意

2024年4月1日以降、審査請求料の減免申請には一部件数制限が設けられました。大量出願する企業は制限に注意が必要です。詳細は特許庁の「審査請求料の減免制度の改正」ページで確認してください。

申請方法:驚くほど簡単になった手続き

新減免制度の最大のメリットは、申請手続きが極めて簡素化されたことです。

必要なことはたった2つ

  1. 出願審査請求書の【手数料に関する特記事項】欄に、「減免を受ける旨」と「減免申請書の提出を省略する旨」を記載
  2. 該当する減免対象者の根拠条文を記載

具体的には、以下のような一文を追記するだけです:

「特許法施行令第10条第○号○に掲げる者に該当する請求人である。減免申請書の提出を省略する。」

旧制度からの改善点

  • ❌ 減免申請書の提出 → 不要に
  • ❌ 証明書類の提出 → 不要に
  • ❌ 申請先が複数(経済産業局等) → 特許庁に統一

この簡素化により、弁理士に依頼していれば手続きの手間はほぼゼロです。

IP BASE:特許庁が運営するスタートアップ支援の入口

特許庁は、スタートアップ向けの知財支援ポータルサイト「IP BASE」を運営しています。

IP BASEで受けられる支援

  • IPAS(スタートアップ知財専門家派遣プログラム): 知財の専門家がスタートアップに派遣され、知財戦略の策定を支援
  • VC-IPAS: ベンチャーキャピタル向けの知財専門家派遣。投資先スタートアップの知財を強化
  • IP BASE AWARD: 知財活用に積極的なスタートアップの表彰制度
  • 勉強会・セミナー: 無料の知財勉強会やイベントが定期的に開催

2026年の注目トピック

2026年には「第7回 IP BASE AWARD」の授賞式が開催され、AIスタートアップの知財戦略や、VCと弁理士の連携による支援など、最新の動向が共有されています。スタートアップ向け意匠分野の早期審査制度も2025年4月からスタートしています。

INPIT(工業所有権情報・研修館)の支援

INPIT(独立行政法人 工業所有権情報・研修館)は、以下のような知財支援を無料で提供しています。

  • 知財総合支援窓口: 全国47都道府県に設置。特許・商標・意匠の相談が無料
  • J-PlatPat: 無料の特許検索データベース。出願前の先行技術調査に必須
  • 知財人材育成: オンラインの知財教育プログラム

費用を最小化するための5つの戦略

1. 自力出願と弁理士依頼の使い分け

  • 簡単な発明:自力出願で官費のみ(減免後8万円程度〜)
  • 重要な発明:弁理士に依頼(減免込みで30万円程度〜)。弁理士の選び方は弁理士の選び方を参照
  • 要検討:まず知財総合支援窓口で無料相談

2. 請求項の数を最適化する

審査請求料は請求項1つにつき4,000円加算されます。必要十分な数に絞ることで費用を抑えられます。

3. 早期審査制度の活用

スタートアップは「早期審査」を利用できる可能性があります。通常10〜14ヶ月かかる審査が、早期審査なら約2〜3ヶ月に短縮されます。

4. 出願のタイミングを戦略的に決める

出願から3年以内に審査請求が必要です。この3年間を利用して、事業の方向性が固まってから審査請求するかどうかを判断できます。

5. 国際出願は段階的に

海外出願は1ヶ国あたり100万円以上かかることも。まずは日本出願で権利化し、市場性が確認できてから国際展開するのが合理的です。

まとめ:スタートアップこそ特許を活用すべき

特許取得の費用は決して安くありませんが、新減免制度を活用すればスタートアップは最大67%の費用削減が可能です。手続きも簡素化されており、ハードルは大きく下がっています。

費用面で特許を諦めていた方は、ぜひ以下のステップから始めてみてください:

  1. IP BASEでメンバー登録し、最新の支援情報を入手
  2. 最寄りの知財総合支援窓口(INPIT)で無料相談
  3. 減免制度を使った場合の費用シミュレーションを確認
  4. IPASで知財専門家の派遣を申請(無料)

特許は「コスト」ではなく「投資」です。適切な制度を活用して、自社の技術を守り、事業成長のエンジンにしていきましょう。

設立後10年未満の中小企業(資本金3億円以下または従業員300人以下の会社・個人事業主)が対象です。ただし、大企業の子会社は除かれます。
特許の審査請求料と特許料(1〜10年分)が主な対象です。実用新案の技術評価請求料・登録料にも一部減免があります。なお、商標・意匠には別の制度があります。
はい。弁理士に依頼しなくても、ご自身で出願審査請求書に所定の記載をすれば減免が受けられます。手続き自体は非常にシンプルです。

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