この記事のポイント
AIが特許の発明者になれるかを巡るDABUS判決と各国の対応をPatentMatch.jpがお届けします。
DABUS事件の概要
DABUS(Device for the Autonomous Bootstrapping of Unified Sentience)は、スティーブン・セイラー博士が開発したAIシステムです。DABUSが自律的に生成した発明について、AIを発明者として特許出願を行ったことで、世界中で議論を巻き起こしました。
各国の判断
| 国・地域 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 米国 | AI不可 | 発明者は「自然人」に限定(Thaler v. Vidal) |
| 英国 | AI不可 | 特許法上の「person」は自然人(最高裁) |
| 欧州(EPO) | AI不可 | 発明者は自然人でなければならない |
| オーストラリア | AI不可 | 連邦裁判所が控訴審で覆す |
| 南アフリカ | AI可 | 世界で唯一AIを発明者として特許付与 |
| 日本 | AI不可 | 発明者は自然人(特許庁見解) |
| 中国 | AI不可 | 発明者は自然人に限定 |
なぜこの問題が重要か
1. AI生成発明の増加
生成AIの進化により、AIが自律的に新しい技術を発見・提案するケースが増加しています。
2. 発明者の特定困難
人間がAIをツールとして使った場合と、AIが自律的に発明した場合の境界は曖昧です。
3. イノベーション政策への影響
AI発明を保護しなければ、AI研究開発へのインセンティブが低下する可能性があります。
現行法での対応策
AIをツールとして使う場合
AIを「発明支援ツール」として使い、人間を発明者とする方法が現在の実務的な対応です。
| 要素 | 人間の関与が必要な範囲 |
|---|---|
| 課題の設定 | 人間が解決すべき課題を定義 |
| AIの指示 | 人間がAIに適切な入力を与える |
| 結果の評価 | 人間がAIの出力を評価・選択 |
| 実施可能性の確認 | 人間が技術的実現性を検証 |
特許庁のガイダンス
米国特許庁(USPTO)は2024年に「AI支援発明のガイダンス」を公表し、人間が「有意義な貢献」を行った場合に特許可能としました。
今後の展望
- 法改正の議論: 各国でAI発明に対応する法改正の議論が進行中
- 新しい権利カテゴリ: AI発明向けの新たな知財制度の検討
- 企業の実務対応: AIツール使用時の発明者記録の重要性
- 国際的な調和: WIPOでの議論が継続中
AI発明の法的取扱いは、知財制度の根本に関わる21世紀最大の課題の一つです。