この記事のポイント
ASEAN主要6カ国(タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール)の特許制度を比較。審査基準、費用、期間を一覧で整理。
ASEAN市場は日本企業にとって重要な生産拠点・消費市場である。しかし各国の特許制度は大きく異なり、統一的な出願戦略が難しい。本記事では主要6カ国の制度を比較し、効率的な出願戦略を提案する。
6カ国の制度比較一覧
| 項目 | シンガポール | マレーシア | タイ | インドネシア | ベトナム | フィリピン |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 管轄機関 | IPOS | MyIPO | DIP | DGIP | NOIP | IPOPHL |
| 特許期間 | 20年 | 20年 | 20年 | 20年 | 20年 | 20年 |
| 実体審査 | あり | あり | あり | あり | あり | あり |
| PCT加盟 | 済 | 済 | 済 | 済 | 済 | 済 |
| 審査期間 | 2〜3年 | 3〜5年 | 5〜7年 | 3〜5年 | 3〜5年 | 2〜4年 |
| 言語 | 英語 | マレー語/英語 | タイ語 | インドネシア語 | ベトナム語 | 英語/フィリピン語 |
各国の特徴
シンガポール
知財先進国として整備された制度を持つ。修正実体審査(他国の審査結果の援用)が可能で、日本やEPOの審査結果を活用できる。出願から登録まで比較的スムーズである。
マレーシア
修正実体審査制度があり、日本・米国・英国・EPO等の審査結果に基づいて迅速な登録が可能である。マレー語翻訳が必要な場合があるが、英語での出願も認められている。
タイ
審査期間が長い傾向にあるが、日本特許庁との協力関係(PPH:特許審査ハイウェイ)を活用すれば期間短縮が可能である。医薬品分野では独自の審査基準に注意が必要である。
インドネシア
ASEAN最大の人口を持つ市場であり、出願の重要性が高い。2016年の新特許法施行後、ソフトウェア関連発明の取り扱いが変化している。
ベトナム
製造拠点としての重要性が高く、製法特許の出願が増加している。審査官のキャパシティに限りがあり、審査期間が長くなる傾向にある。PPHの活用が有効である。
フィリピン
英語での出願が可能であり、手続きが比較的容易である。IPOPHL独自の早期審査プログラムも利用できる。
ASEAN出願の効率化戦略
PPH(特許審査ハイウェイ)の活用
日本特許庁はASEAN各国とPPH協定を締結している。日本で特許査定を得た後にPPHを利用すれば、ASEAN各国での審査が大幅に加速する。
ASPEC(ASEANパテントエグザミネーション・コオペレーション)
ASEAN加盟国間の審査協力プログラムであるASPECを活用すれば、1つのASEAN国で特許査定を得た後、他のASEAN国での審査が迅速化される。
優先国の選定基準
| 基準 | 優先すべき国 |
|---|---|
| 製造拠点 | ベトナム、タイ、インドネシア |
| 消費市場 | インドネシア、フィリピン、タイ |
| 知財環境 | シンガポール、マレーシア |
| 模倣品リスク | ベトナム、インドネシア |
コスト比較
出願から登録までの概算費用(弁理士費用含む):
| 国 | 概算費用 |
|---|---|
| シンガポール | 50〜80万円 |
| マレーシア | 40〜70万円 |
| タイ | 40〜70万円 |
| インドネシア | 40〜70万円 |
| ベトナム | 35〜60万円 |
| フィリピン | 40〜65万円 |
まとめ
ASEAN特許戦略は、6カ国の制度の違いを理解した上で、PPHやASPECを戦略的に活用することがコスト効率化の鍵である。事業展開の優先順位に応じた国の選定と、段階的な出願計画の策定を推奨する。