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オーストラリア特許庁(IP Australia)への特許出願手続き、費用、審査の特徴を解説。オセアニア市場での知財戦略をPatentMatch.jpがお届けします。
オーストラリアは資源・エネルギー、バイオテクノロジー、医療機器、農業技術など多くの分野で高い技術力を持ち、アジア太平洋地域の重要市場です。日本企業にとっても、オーストラリアでの特許取得は事業保護と市場参入の両面で大きな意味を持ちます。
本ガイドでは、IP Australia(オーストラリア知的財産庁)への出願手続き、審査プロセス、費用を解説します。
オーストラリア特許制度の概要
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 管轄機関 | IP Australia |
| 特許存続期間 | 出願日から20年(医薬品は最大25年) |
| 審査方式 | 審査請求制(出願日から5年以内) |
| 加盟条約 | PCT、パリ条約、TRIPS協定、CPTPP |
| 公開 | 出願日から18ヶ月後 |
| 言語 | 英語 |
特許の種類
| 種類 | 保護期間 | 概要 |
|---|---|---|
| 標準特許(Standard Patent) | 出願日から20年 | 通常の発明特許 |
| イノベーション特許 | 廃止(2021年8月25日以降の新規出願不可) | 旧制度の短期特許 |
イノベーション特許は2021年に廃止されました。現在は標準特許のみが利用可能です。
出願ルートと手続き
出願ルート
- 直接出願 — IP Australiaに英語で出願
- パリ条約ルート — 優先権主張(12ヶ月以内)
- PCTルート — 国内移行期限は優先日から31ヶ月
必要書類
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 願書 | 英語 |
| 完全明細書 | 英語(請求の範囲を含む) |
| 要約書 | 英語 |
| 図面 | 必要に応じて |
| 優先権書類 | DAS利用可 |
| 宣言書 | 発明者の特定 |
英語で出願できるため、翻訳コストが不要な点は日本企業にとって大きなメリットです。
審査の特徴
審査請求と審査期間
審査請求期限は出願日から5年以内と比較的長く設定されています。審査請求後の平均処理期間は約12〜18ヶ月です。
早期審査制度
以下の場合、早期審査を申請できます(追加料金不要)。
- 出願人がオーストラリアで発明を実施中または実施予定
- 第三者がオーストラリアで発明を実施中
- 出願人が国際調査報告を受領済み
受理期間(Acceptance Deadline)
審査において最初のオフィスアクション(審査報告書)が発行された後、出願人には12ヶ月の受理期間が与えられます。この期間内にすべての拒絶理由を解消し、受理(Acceptance)を得る必要があります。
進歩性の判断基準
2013年の法改正(Raising the Bar Act)により、オーストラリアの進歩性の判断基準は厳格化されました。「当業者にとって自明でない」という判断は、国際的な先行技術文献の組み合わせに基づいて行われます。
費用の目安
| 項目 | 費用(AUD) | 日本円概算 |
|---|---|---|
| 出願料 | 410 | 約40,000円 |
| 審査請求料 | 490 | 約48,000円 |
| 受理料 | 250 | 約24,500円 |
| 年金(4年目以降) | 300〜 | 約29,000円〜/年 |
※AUD 1 ≒ 約98円(2026年3月時点の概算)。SME向けの割引制度あり。
日本企業が注意すべきポイント
12ヶ月の受理期間
最初の審査報告書の発行から12ヶ月以内にすべての拒絶理由を解消する必要があります。米国や日本のように複数回のオフィスアクションを経るプロセスとは異なり、時間的制約が厳しいため、迅速な対応が求められます。
PPH(特許審査ハイウェイ)の活用
日本とIP Australiaの間にはPPHが運用されており、日本での審査結果を活用した早期審査が可能です。
医薬品の特許期間延長
医薬品(農薬を含む)については、規制当局の承認に要した期間に応じて、最大5年間の特許期間延長が認められます。最長で出願日から25年の保護が可能です。
CPTPP加盟国としてのメリット
日本とオーストラリアはともにCPTPPに加盟しており、知財保護の水準が高い水準で調和されています。
まとめ
オーストラリアは英語出願が可能で審査品質も高く、日本企業にとって取り組みやすい特許制度を持つ国です。12ヶ月の受理期間という時間的制約には注意が必要ですが、PPHの活用や早期審査制度を使えば効率的に権利化できます。PatentMatch.jpでは、オセアニア地域の知財動向を引き続きお届けします。