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カナダ知的財産庁(CIPO)への特許出願手続き、費用、審査の特徴を解説。北米市場での知財戦略をPatentMatch.jpがお届けします。
カナダは北米市場へのゲートウェイとして、多くの日本企業が事業展開する重要市場です。米国と地理的・経済的に密接に結びつきながらも、独自の特許制度を運用しています。
本ガイドでは、カナダ知的財産庁(CIPO: Canadian Intellectual Property Office)への出願手続き、審査プロセス、費用について解説します。
カナダ特許制度の概要
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 管轄機関 | CIPO(Canadian Intellectual Property Office) |
| 特許存続期間 | 出願日から20年 |
| 審査方式 | 審査請求制(出願日から5年以内) |
| 加盟条約 | PCT、パリ条約、TRIPS協定、CPTPP |
| 公開 | 出願日から18ヶ月後 |
| 言語 | 英語またはフランス語 |
2019年の法改正(カナダ特許規則の近代化)
カナダは2019年に特許規則を大幅に改正し、以下の変更が実施されました。
| 改正点 | 旧制度 | 新制度 |
|---|---|---|
| 審査請求期限 | 出願日から5年 | 出願日から5年(変更なし) |
| 年金制度 | 出願維持年金 | 登録後の年金に変更 |
| 明細書の補正 | 柔軟 | 新規事項追加の制限強化 |
| 特許期間調整 | なし | PTA(Patent Term Adjustment)導入 |
出願ルートと手続き
出願ルート
- 直接出願 — CIPOに英語またはフランス語で出願
- パリ条約ルート — 優先権主張(12ヶ月以内)
- PCTルート — 国内移行期限は優先日から30ヶ月
必要書類
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 願書 | 英語またはフランス語 |
| 明細書・請求の範囲 | 英語またはフランス語 |
| 要約書 | 英語またはフランス語 |
| 図面 | 必要に応じて |
| 優先権書類 | DAS利用可 |
| 配列表 | バイオ関連の場合 |
英語で出願可能なため、米国出願と同一書類をベースに作成できる点は、日本企業にとって大きなメリットです。
審査の特徴
審査期間
CIPOの平均審査期間は約24〜30ヶ月です。米国やKIPOに比べると時間がかかりますが、近年は改善傾向にあります。
審査請求期限は5年
カナダの審査請求期限は出願日から5年と、日本(3年)や韓国(3年)に比べて長く設定されています。市場動向を見極めてから審査を開始する戦略的判断が可能です。
PTA(特許期間調整)制度
2019年の改正で導入されたPTA制度により、CIPOの審査遅延に起因する特許期間の損失について、最大5年の期間延長が認められます。
PPH(特許審査ハイウェイ)
日本とカナダの間にはPPHが運用されています。日本での特許査定結果を活用してCIPOでの審査を早期化できます。
| PPH利用の効果 | 内容 |
|---|---|
| 審査期間の短縮 | 約12〜18ヶ月 |
| 特許査定率 | 通常審査比で向上 |
| 必要書類 | 日本の審査結果、対応クレーム等 |
費用の目安
| 項目 | 費用(CAD) | 日本円概算 |
|---|---|---|
| 出願料(小規模事業者) | 200 | 約22,000円 |
| 出願料(大企業) | 400 | 約44,000円 |
| 審査請求料(小規模) | 400 | 約44,000円 |
| 審査請求料(大企業) | 800 | 約88,000円 |
| 登録料 | 277 | 約30,500円 |
| 年金(2〜4年目) | 50/年(小規模) | 約5,500円/年 |
※CAD 1 ≒ 約110円(2026年3月時点の概算)。「小規模事業者(Small Entity)」は従業員100人以下の企業・大学等が対象。
日本企業が注意すべきポイント
米国出願との連携
カナダと米国は英語で出願できるため、同一の英文明細書をベースに両国で出願する戦略が効率的です。ただし、特許法上の要件(自明性の判断基準など)に違いがあるため、クレームの調整が必要な場合があります。
CPTPP(TPP11)の影響
カナダはCPTPPに加盟しており、医薬品に関する特許期間の延長(最大2年)やデータ保護制度などが整備されています。
先願主義への移行
カナダは2019年の改正で**先発明主義から先願主義(first-to-file)**に完全移行しました。早期の出願がこれまで以上に重要になっています。
まとめ
カナダは米国との一体的な知財戦略を構築しやすい国であり、英語出願が可能な点は日本企業にとって大きな利点です。審査請求期限が5年と長い点を活かし、市場動向を見ながら戦略的に特許取得を進めることが可能です。PatentMatch.jpでは、北米の知財動向を引き続きお届けします。