特許活用ガイド

欧州統一特許ガイド — UPC裁判所の活用法

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この記事のポイント

2023年に始まった欧州統一特許制度とUPC(統一特許裁判所)の仕組みと活用法を解説。PatentMatch.jpがお届けします。

2023年6月に運用が開始された欧州統一特許(Unitary Patent)と統一特許裁判所(UPC: Unified Patent Court)は、欧州の知財制度を大きく変えました。2026年現在、制度の運用も安定し、日本企業の活用事例が増加しています。


統一特許制度の概要

従来の欧州特許との違い

従来のEPO(欧州特許庁)での特許取得後は、各国で個別に有効化(バリデーション)し、翻訳を提出し、個別に年金を支払う必要がありました。

統一特許では、1回の手続きで参加国全てにおいて有効な特許権を取得できます。

項目従来の欧州特許統一特許
有効化手続き各国個別一括
翻訳各国語に翻訳不要(経過措置あり)
年金各国に個別納付EPOに一括納付
訴訟各国裁判所UPCで一元化
コスト高い(多国維持)4か国以上で有利

参加国

2026年現在、17か国が参加しています。ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、オーストリアなどの主要国が含まれます。なお、英国はBrexitにより参加していません。


UPC(統一特許裁判所)の活用

UPCの管轄

UPCは以下の事件を管轄します。

  • 統一特許に関する侵害訴訟・無効訴訟
  • 従来の欧州特許に関する侵害・無効(オプトアウトしていない場合)
  • 補充的保護証明書(SPC)に関する訴訟

裁判所の構成

  • 中央部:パリ(化学・医薬)、ミュンヘン(機械・電気)
  • 地方部・地域部:ドイツ(4か所)、フランス、イタリアなど
  • 控訴裁判所:ルクセンブルク

UPCの特徴

  • 12ヶ月以内の迅速な判決
  • EU全域に効力を持つ差止命令
  • 技術系の裁判官と法律系の裁判官の混合パネル
  • 仮処分の利用が容易

オプトアウト制度

従来の欧州特許の権利者は、UPCの管轄から外れる「オプトアウト」を選択できます。

オプトアウトすべき場合

  • 一括無効のリスクを回避したい
  • 各国の既存の訴訟戦略を維持したい
  • UPCの判例が未成熟な段階でリスクを取りたくない

オプトアウトしない方が良い場合

  • 欧州全域での一括差止を求めたい
  • 複数国での並行訴訟のコストを削減したい
  • 侵害者に対して強力な権利行使を行いたい

日本企業への実務アドバイス

コスト比較

4か国以上でバリデーションする場合、統一特許の方がコスト面で有利です。

例:ドイツ、フランス、イタリア、オランダの4か国
従来方式:翻訳費+各国代理人費 = 約200~300万円
統一特許:一括手続き = 約80~120万円

戦略的な使い分け

  • コア技術:統一特許で広域をカバー
  • 重要市場固有の技術:従来の国別特許でオプトアウトも検討
  • 英国市場:別途GB特許の出願が必要

PatentMatch.jpでは、欧州特許戦略のコンサルティングを提供しています。

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