特許活用ガイド

新規性喪失の例外規定 — 公開してしまった発明を特許にする方法

約3分で読める

この記事のポイント

発明を公開してしまった後でも特許を取れる「新規性喪失の例外規定」を詳しく解説。適用要件、手続き、注意点をPatentMatch.jpがお届けします。

学会で研究成果を発表してしまった。展示会で新製品を公開してしまった。——そんな状況でも、一定の条件を満たせば特許を取得できる制度が「新規性喪失の例外規定」(グレースピリオド)です。本記事では、この制度の要件と活用上の注意点を解説します。


新規性喪失の例外規定とは

制度の趣旨

特許法第30条に定められた制度で、発明者自身の行為により発明が公開された場合に、一定期間内に出願すれば新規性を喪失しなかったものとして取り扱う規定です。

適用対象となる公開行為

2018年の法改正により、適用対象が大幅に拡大されました。

公開行為の種類具体例適用可否
学会発表論文発表、口頭発表、ポスター発表適用可
展示会出展展示会での製品展示・デモ適用可
販売・譲渡製品の販売開始適用可
ウェブ公開自社サイト、SNS、プレスリリース適用可
テレビ・新聞メディア報道適用可
試験公開の場での実証実験適用可

適用要件

3つの要件

  1. 公開が発明者の行為に起因すること: 発明者自身による公開、または発明者の意に反する公開
  2. 公開から1年以内の出願: 公開日から1年以内に特許出願を行うこと
  3. 所定の手続き: 出願時の申請と証明書類の提出

手続きの流れ

ステップ内容期限
1特許出願時に「新規性喪失の例外規定の適用を受ける旨」を願書に記載出願と同時
2証明書類の提出出願日から30日以内

証明書類に記載すべき事項

  • 公開の事実(日時、場所、方法)
  • 公開された発明の内容
  • 公開が発明者の行為に起因する旨の証拠

注意点と落とし穴

第三者の独自公開には効果がない

新規性喪失の例外規定は、あくまで発明者自身の公開行為についてのみ適用されます。発明者の公開を見た第三者が独自に同一内容を公開した場合、その第三者の公開は例外規定の対象外です。

外国出願への影響

この点が最も重要な注意点です。新規性喪失の例外規定は各国の法律で異なります

国・地域グレースピリオド注意事項
日本1年2018年法改正で拡大
米国1年適用範囲が広い
欧州(EPO)なし(原則)学術団体での発表等、極めて限定的
中国6ヶ月限定的な適用
韓国1年日本と類似

特に欧州特許庁(EPO)にはグレースピリオドが実質的にないため、欧州での特許取得を考えている場合は、公開前に出願を完了させる必要があります。

先願主義との関係

例外規定を利用しても、出願日が繰り上がるわけではありません。公開後に他者が同一発明を独自に出願した場合、先に出願した者が権利を取得します。例外規定はあくまで「救済措置」であり、万全の制度ではないことを認識してください。


実務上のベストプラクティス

理想的な対応

  1. 公開前に出願する: これが最善策。学会発表や展示会の前に出願を完了させる
  2. 仮出願の検討: 米国出願を予定している場合は仮出願(provisional application)を活用
  3. 公開が避けられない場合: 公開日を正確に記録し、直ちに弁理士に相談

公開してしまった場合の緊急対応

  1. 公開の日時・場所・内容を正確に記録
  2. 証拠資料(発表スライド、論文、展示写真等)を保全
  3. 速やかに弁理士に連絡し、1年以内の出願スケジュールを立てる
  4. 外国出願の必要性を検討し、欧州等への影響を確認

新規性喪失の例外規定は発明者の救済制度ですが、制約も多い制度です。可能な限り公開前の出願を心がけつつ、万が一の際の対応策を知っておくことが重要です。

関連記事

特許活用ガイド

AI関連発明の審査基準2026

2026年時点でのAI関連発明の審査基準を解説。特許庁の最新事例集を踏まえ、生成AI・大規模言語モデル・強化学習の特許適格性と出願戦略を紹介します。

3分で読める

他の記事も読んでみませんか?

PatentMatch.jpでは、特許活用に関する実践的な情報を多数掲載しています。