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知財の会計処理 — 無形資産としての特許の計上方法

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この記事のポイント

特許を含む知財の会計処理を解説。日本基準・IFRSにおける無形資産の認識・測定・開示方法と、知財価値評価の3つのアプローチを紹介します。

なぜ知財の会計処理が重要か

企業価値に占める無形資産の割合が年々高まる中、知財を適切に会計処理することは財務報告の信頼性に直結します。M&A時の取得価格の配分(PPA)、減損テスト、投資家への開示など、知財の会計処理が求められる場面は増えています。

日本基準における知財の会計処理

自社開発の特許

日本基準では、研究開発費は原則として発生時に費用処理されます(企業会計基準委員会「研究開発費等に係る会計基準」)。そのため、自社で開発した特許は貸借対照表(B/S)に資産として計上されないのが一般的です。

ただし、以下の費用は「特許権」として無形固定資産に計上できます。

費目資産計上の可否備考
出願費用(特許庁手数料)登録が確実な場合
弁理士費用出願・権利化に直接関連するもの
研究開発費不可発生時に費用処理
社内人件費原則不可直接紐付けが困難

取得した特許

他社から購入した特許や、M&Aで取得した特許は、取得価額で無形固定資産に計上します。

償却方法

特許権の法定耐用年数は8年(税法上)です。会計上は、特許の経済的耐用年数(残存期間や技術の陳腐化を考慮)に基づいて定額法で償却するのが一般的です。

IFRSにおける知財の会計処理

自社開発の無形資産(IAS 38)

IFRSでは、開発費を一定の要件を満たす場合に資産計上することが求められます。

資産計上の6要件

  1. 技術的に実現可能であること
  2. 完成させ、使用または販売する意図があること
  3. 使用または販売する能力があること
  4. 将来の経済的便益が期待されること
  5. 開発を完了するための資源が利用可能であること
  6. 開発中の支出を信頼性をもって測定できること

日本基準との主な違い

項目日本基準IFRS
開発費の資産計上原則不可要件充足で資産計上
のれんの償却定期償却(20年以内)非償却(減損テスト)
再評価不可選択可能(再評価モデル)

知財価値評価の3つのアプローチ

コストアプローチ

特許の開発にかかったコスト(再調達原価または複製原価)に基づいて評価します。

  • メリット: 客観的なデータに基づく
  • デメリット: 将来の収益性を反映しない

マーケットアプローチ

類似の特許取引事例の価格を参考に評価します。

  • メリット: 市場の実勢を反映
  • デメリット: 比較可能な取引事例が少ない

インカムアプローチ

特許が将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価します。

  • メリット: 将来の収益力を直接反映
  • デメリット: 将来予測の不確実性が高い

代表的な手法

  • DCF法(割引キャッシュフロー法): 特許に帰属する将来CFを割引
  • ロイヤリティ免除法: 特許を他者から借りた場合のロイヤリティを節約額として評価
  • 超過収益法: 特許がなかった場合との収益差分で評価

実務上のポイント

M&A時の取得価格配分(PPA)

M&Aで取得した知財は、公正価値で認識し、取得価格をのれんと識別可能な無形資産に配分する必要があります。特許、技術、顧客関係、ブランドなど、識別可能な無形資産をそれぞれ個別に評価します。

減損テスト

計上した知財の帳簿価額が回収可能価額を上回っていないか、定期的にテストする必要があります。技術の陳腐化や事業環境の変化により、減損損失の計上が必要になる場合があります。

まとめ

知財の会計処理は、適用する会計基準(日本基準/IFRS)によって大きく異なります。特にIFRS適用企業は開発費の資産計上が必要となるケースがあり、知財部門と経理部門の緊密な連携が不可欠です。自社の会計基準に応じた適切な処理を行い、知財の価値を財務諸表に正しく反映させましょう。

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