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特許譲渡契約書の書き方 — 権利移転の法的要件

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この記事のポイント

特許権の譲渡契約書に必要な条項と法的要件を解説。移転登録手続き、対価の決め方、表明保証、売主・買主双方の注意点をひな形とともに紹介します。

特許譲渡契約とは

特許譲渡契約は、特許権を売主(譲渡人)から買主(譲受人)に移転するための契約です。特許権は登録により効力が発生する財産権であるため、契約書の作成だけでなく、特許庁への移転登録が必要です。

特許譲渡契約書の必須条項

基本条項一覧

条項内容ポイント
譲渡対象の特定特許番号、発明の名称出願中の場合は出願番号
譲渡対価金額、支払方法、支払時期一括・分割・ロイヤリティ型
移転登録協力移転登録手続きへの協力義務必要書類の提出義務
表明保証権利の有効性、第三者権利の不存在特に重要
瑕疵担保権利の瑕疵に関する責任無効審判リスクの分担
競業避止類似技術の開発制限範囲と期間を明確に

譲渡対象の特定

特許権を正確に特定するために、以下の情報を記載します。

  1. 特許番号(または出願番号)
  2. 発明の名称
  3. 登録日(または出願日)
  4. 特許権者の氏名・住所
  5. 関連する分割出願や外国出願の取り扱い

譲渡対価の決め方

特許の譲渡対価は、以下の方法で算定されることが一般的です。

  • 一括払い: 特許の評価額に基づく固定金額
  • マイルストーン型: 事業化の進捗に応じて段階的に支払い
  • ロイヤリティ併用型: 一時金+将来の実施料
  • 株式対価型: スタートアップへの譲渡で株式を対価とする場合

移転登録手続き

必要書類

特許庁への移転登録には以下の書類が必要です。

  • 移転登録申請書
  • 譲渡証書(または譲渡契約書の写し)
  • 委任状(代理人に委託する場合)
  • 登録免許税(特許1件あたり15,000円)

手続きの流れ

  1. 譲渡契約書の締結
  2. 譲渡証書の作成
  3. 移転登録申請書の提出
  4. 特許庁での審査
  5. 移転登録の完了(通常1〜2ヶ月)

登録が効力要件

特許法では、特許権の移転は登録しなければ効力を生じない(特許法第98条)とされています。契約書を締結しただけでは、第三者に対して権利を主張できません。

売主(譲渡人)の注意点

実施権の留保

譲渡後も自社で当該技術を使い続ける必要がある場合、譲渡契約に通常実施権の留保条項を盛り込みます。

既存ライセンスの取り扱い

譲渡対象の特許に既存のライセンス契約がある場合、ライセンシーの権利を引き継ぐ条件を明確にする必要があります。通常実施権は登録なくても対抗できます(当然対抗制度)。

従業員発明の処理

譲渡対象の特許が従業員の発明に基づく場合、職務発明規程に基づく相当の利益の支払いが完了しているか確認が必要です。

買主(譲受人)の注意点

デューデリジェンスの実施

譲渡を受ける前に、以下の点を調査します。

  1. 権利の有効性: 特許が有効に存続しているか
  2. 無効リスク: 先行技術により無効になるリスクがないか
  3. 第三者の権利: 質権、通常実施権等が設定されていないか
  4. 係争の有無: 無効審判や侵害訴訟が係属していないか

表明保証の取得

売主に対して以下の表明保証を求めます。

  • 特許権の正当な権利者であること
  • 第三者の権利を侵害していないこと
  • 開示されていない係争が存在しないこと
  • 特許の維持年金が適切に納付されていること

まとめ

特許譲渡は、単なる契約書の締結だけでは完了しません。移転登録手続き、税務処理、既存ライセンスの取り扱いなど、多岐にわたる実務対応が必要です。売主・買主双方がリスクを理解し、弁理士や弁護士の専門家のサポートを受けながら進めることをお勧めします。

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