この記事のポイント
特許クレーム(特許請求の範囲)の読み方を基礎から解説。独立項・従属項の構造や権利範囲の判断方法をPatentMatch.jpがお届けします。
特許の核心は「特許請求の範囲」(クレーム)にあります。明細書がどれほど詳細でも、クレームに書かれていないことは権利として保護されません。クレームを正確に読む力は、知財実務の基本です。
クレームの基本構造
独立項(独立クレーム)
他のクレームを引用せず、発明の基本的な構成を定義するクレームです。
【請求項1】
AとBとCとを備える装置。
この場合、A、B、Cの全てを備えている装置だけが権利範囲に含まれます。AとBだけの装置は含まれません。
従属項(従属クレーム)
独立項を引用し、さらに限定を加えるクレームです。
【請求項2】
前記Bが金属製である、請求項1に記載の装置。
従属項は独立項よりも権利範囲が狭くなりますが、独立項が無効になった場合のバックアップとして機能します。
クレームの読み方のルール
ルール1:構成要件に分解する
クレームを「構成要件」に分解することが最初のステップです。
【請求項1】
(A) センサーにより対象物の温度を測定するステップと、
(B) 測定された温度をAIモデルに入力するステップと、
(C) AIモデルの出力に基づいて制御信号を生成するステップと、
を含む制御方法。
侵害判断では、(A)(B)(C)の全てを充足するかどうかを検討します。
ルール2:用語の解釈
クレーム中の用語は、まず明細書の定義に従い、次に当業者の通常の理解に基づいて解釈されます。
- 「含む」「備える」:列挙以外の要素を追加しても該当(オープンクレーム)
- 「からなる」:列挙された要素のみ(クローズドクレーム)
- 「実質的に」:多少の偏差は許容
ルール3:均等論
クレームの文言に完全には一致しなくても、実質的に同一の技術であれば権利範囲に含まれる場合があります。日本の最高裁判決(ボールスプライン事件)で5つの要件が示されました。
- 非本質的部分であること
- 置換可能であること
- 置換容易であること
- 出願時の公知技術でないこと
- 意識的に除外されていないこと
クレームの種類
物の発明
○○と△△を備える装置。
○○を含む組成物。
方法の発明
○○するステップを含む方法。
○○して△△する製造方法。
生産方法の発明(プロダクトバイプロセス)
○○の方法により製造された製品。
実務での活用ポイント
競合の特許を読む場合
- まず独立項だけを読み、権利範囲の概要を把握
- 自社製品が各構成要件を充足するか逐一検討
- 充足しない要素があれば非侵害の可能性
- 均等論の適用可能性も検討
自社の出願時
- 独立項は可能な限り広い上位概念で記載
- 従属項で段階的に限定を加え、防御層を形成
- 方法と装置の両方のクレームを設ける
- 将来の技術発展も視野に入れた表現を使用
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