この記事のポイント
米国のPGR(付与後レビュー)を解説。IPRとの違い、利用可能な無効理由の範囲、申立期限、戦略的な活用場面を紹介します。
PGRとは
PGR(Post-Grant Review:付与後レビュー)は、米国特許の付与後9ヶ月以内に利用できる特許無効化手続きです。IPR(当事者系レビュー)と同様にPTABで審理されますが、利用可能な無効理由がより広い点が特徴です。
IPRとPGRの違い
| 項目 | IPR | PGR |
|---|---|---|
| 申立期限 | 特許付与後9ヶ月以降 | 特許付与後9ヶ月以内 |
| 無効理由 | 新規性・非自明性のみ | すべての無効理由 |
| 証拠の種類 | 特許文献・印刷刊行物 | すべての証拠形態 |
| 開始基準 | 合理的見込み | 少なくとも1つのクレームが無効である可能性が高い |
| 利用頻度 | 非常に多い | 比較的少ない |
PGRで主張できる無効理由
PGRの最大の利点は、IPRよりも広い範囲の無効理由を主張できることです。
- 新規性欠如(102条)
- 非自明性(103条)
- 記載要件違反(112条):明細書の記載不足、クレームの不明確さ
- 特許適格性の欠如(101条):抽象的アイデアに過ぎないとの主張
- 発明者の不正
- 先の出願日を有する他者の出願との二重特許
PGRの戦略的活用場面
1. 記載要件や特許適格性で攻撃したい場合
IPRでは主張できない101条(特許適格性)や112条(記載要件)の問題を理由に特許を攻撃する場合、PGRが唯一の選択肢です。特にソフトウェア特許やビジネスモデル特許に対して有効です。
2. 早期に特許リスクを排除したい場合
競合特許が付与された直後に行動し、事業への影響を最小限にとどめたい場合に適しています。
3. 証拠の種類が限定的でない場合
公知使用や口頭発表など、印刷刊行物以外の証拠が利用可能なため、証拠の幅が広い場合に有利です。
PGRの手続きの流れ
- 特許付与の監視:競合他社の特許付与を定期的に監視する
- 9ヶ月以内の申立判断:付与後9ヶ月以内に申立を行うかどうかを迅速に判断する
- 申立書の準備:先行技術や無効理由を整理した申立書を提出する
- 開始決定:PTABが審理を開始するかどうかを決定する
- 審理・最終決定:開始決定から12ヶ月以内に最終判断が示される
注意点
短い申立期限
特許付与後9ヶ月という短期間で申立を準備する必要があるため、競合特許の監視体制が不可欠です。特許ウォッチングサービスの利用を検討しましょう。
高い開始基準
PGRの開始基準はIPRよりも高く設定されています。「無効である可能性が高い」ことを示す必要があり、申立の質が重要です。
禁反言の範囲
PGRの最終決定後の禁反言の範囲はIPRよりも広いため、PGRで主張しなかった理由も後の訴訟で制限される可能性があります。
まとめ
PGRは、特許付与直後に広い無効理由で攻撃できる強力な手続きです。ただし、申立期限が短く開始基準も高いため、競合特許の監視と迅速な意思決定が求められます。IPRとの使い分けを理解し、状況に応じて最適な手続きを選択しましょう。