この記事のポイント
中小スタートアップ企業向けの特許費用軽減制度を詳しく解説。審査請求料・年金が1/3に軽減され、10年間で最大22万円以上を節約できます。適用要件・申請方法・具体的な費用比較を紹介。
スタートアップにとって特許取得の最大のハードルは「費用」です。しかし、中小スタートアップ企業向けの軽減制度を活用すれば、10年間の特許費用を最大64%削減できます。
本記事では、特許庁の公式データに基づき、軽減制度の適用要件、申請方法、具体的な節約額を解説します。
軽減制度の概要
制度名と適用範囲
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 中小スタートアップ企業向け料金軽減制度 |
| 施行日 | 2019年4月1日以降 |
| 軽減率 | 1/3に軽減 |
| 対象費用 | 審査請求料、特許料(1〜10年分)、送付手数料、調査手数料、予備審査手数料 |
出願料(14,000円)は軽減対象外ですが、最もコストが大きい審査請求料と年金が対象になるため、トータルの節約効果は非常に大きいです。
適用要件
法人の場合(3要件すべて必要)
- 設立後10年未満であること
- 資本金額または出資総額が3億円以下であること
- 大企業に支配されていないこと
個人事業主の場合
- 事業開始後10年未満であること
よくある質問:「うちは対象になる?」
- 設立8年で資本金1億円の会社 → 対象
- 設立3年で資本金5億円の会社 → 対象外(資本金3億円超)
- 設立12年で資本金1千万円の会社 → 対象外(設立10年超)
- 大企業の100%子会社 → 対象外(大企業支配)
申請方法
2019年4月1日以降の出願の場合
証明書類は不要です。軽減申請書を願書に添付するだけで申請が完了します。
手順:
- 特許庁のウェブサイトから軽減申請書の様式をダウンロード
- 必要事項を記入
- 願書に添付して出願
これだけで審査請求料と年金が1/3になります。
具体的な節約額:3つのケースで比較
ケース1: シンプルケース(請求項1件)
最小限の発明内容を1件の請求項で出願する場合。
| 項目 | 通常費用 | 軽減後 |
|---|---|---|
| 出願料 | 14,000円 | 14,000円 |
| 審査請求料 | 142,000円 | 47,333円 |
| 特許登録料 | 4,600円 | 1,533円 |
| 10年間総額 | 351,800円 | 126,598円 |
| 節約額 | — | 225,202円(64%削減) |
ケース2: 標準的なケース(請求項5件)
複数の技術的特徴を持つ発明を5件の請求項で出願する場合。
| 項目 | 通常費用 | 軽減後 |
|---|---|---|
| 出願料 | 14,000円 | 14,000円 |
| 審査請求料 | 158,000円 | 52,667円 |
| 10年間総額 | 423,400円 | 推定152,000円前後 |
| 節約額 | — | 約271,000円(64%削減) |
ケース3: 多数請求項(請求項10件)
広い権利範囲を確保するために10件の請求項で出願する場合。
出願料は変わりませんが、審査請求料が178,000円→約59,333円に、年金も同様に1/3に軽減されます。
軽減制度以外のスタートアップ支援プログラム
費用軽減に加え、以下の政府プログラムも活用しましょう。
| プログラム | 内容 | 費用 |
|---|---|---|
| IPAS(知財アクセラレーションプログラム) | 知財戦略を専門家がサポート | 無料 |
| PASS(プッシュ型支援) | 特許庁がスタートアップに直接アプローチ | 無料 |
| 海外展開に向けた権利化支援 | 海外出願の費用・手続き支援 | 一部補助 |
| 中小企業の知財活動への補助金 | 知財活動全般の補助 | 年3万〜10万円/企業 |
特にIPASは、知財専門家がスタートアップの事業戦略に合った特許出願を提案してくれる無料プログラムで、費用対効果が非常に高いです。
注意点
軽減申請のタイミング
軽減は申請しなければ自動適用されないため、必ず出願時に申請書を添付してください。後から申請することもできますが、遡及適用はされません。
設立年数のカウント
「設立後10年未満」は登記日が起算点です。設立9年11ヶ月の時点で出願すれば対象ですが、10年を超えると対象外になります。複数の出願を計画している場合は、タイミングを考慮しましょう。
資本金増額に注意
資金調達で資本金が3億円を超えると軽減対象外になります。資本準備金への充当で資本金を抑える方法も検討してください。
費用比較:軽減制度あり vs なし(10年間)
| 請求項数 | 通常(10年間) | 軽減後(10年間) | 節約額 | 節約率 |
|---|---|---|---|---|
| 1件 | 351,800円 | 126,598円 | 225,202円 | 64% |
| 5件 | 423,400円 | 約152,000円 | 約271,000円 | 64% |
| 10件 | 約515,000円 | 約185,000円 | 約330,000円 | 64% |
よくある質問(FAQ)
Q. 何が安くなりますか?
審査請求料と特許料(第1〜10年分)が1/3に軽減されます。出願料は対象外です。
Q. 適用要件は何ですか?
法人は「設立後10年未満」「資本金3億円以下」「大企業に支配されていないこと」の3要件です。
Q. 申請は難しいですか?
簡単です。証明書類不要で、軽減申請書を願書に添付するだけです。
Q. いくら節約できますか?
請求項1件で10年間225,202円(64%)の節約です。
Q. 他の支援策と併用できますか?
IPAS、PASS、海外展開支援などと併用可能です。
まとめ
スタートアップが特許を取得する際、費用軽減制度を使わないのは大きな機会損失です。
- 軽減率: 審査請求料・年金が1/3
- 節約額: 10年間で22万〜33万円以上
- 申請: 願書に申請書を添付するだけ
- 特許庁の手数料一覧で通常費用も確認
- 特許ポートフォリオ戦略と組み合わせて戦略的に活用
最終確認日: 2026年3月31日
参考データ: 特許庁公式データ(data/crawled/startup-patent-cost-reduction.json)に基づく