特許活用ガイド

特許紛争のADR — 調停・仲裁で解決するメリット

約4分で読める

この記事のポイント

特許紛争をADR(裁判外紛争解決手続)で解決する方法を解説。調停・仲裁・あっせんの違い、利用手順、メリット・デメリットを網羅します。

はじめに

特許紛争というと「訴訟」のイメージが強いが、実際にはすべての紛争が法廷で争われるわけではない。**ADR(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決手続)**は、訴訟に代わる紛争解決手段として、特に国際的な特許紛争やビジネス関係の維持が重要なケースで活用されている。本記事では、特許紛争におけるADRの種類・手続・メリットを解説する。


ADRの種類

特許紛争で利用可能なADRは主に3種類ある。

種類概要拘束力
あっせん中立の第三者が当事者間の交渉を促進なし(合意に至れば契約として拘束)
調停調停人が解決案を提示し、合意を目指すなし(合意に至れば契約として拘束)
仲裁仲裁人が判断を下す(仲裁判断)あり(確定判決と同一の効力)

日本における知財ADR機関

日本知的財産仲裁センター

日本弁護士連合会と日本弁理士会が共同で設立した日本知的財産仲裁センターが、知財分野のADRを専門的に取り扱っている。

項目内容
所在地東京・大阪
取扱分野特許、実用新案、意匠、商標、著作権、不正競争
手続調停、仲裁、判定
調停人・仲裁人知財専門の弁護士・弁理士から選任

特許庁の判定制度

特許庁では、特許発明の技術的範囲について判定を求めることができる(特許法71条)。判定は法的拘束力を持たないが、侵害の有無を判断する参考資料として活用される。

項目内容
費用40,000円
期間約3〜6か月
効力法的拘束力なし(参考意見)

ADRの手続フロー(調停の場合)

  1. 申立て:一方当事者が調停申立書を提出
  2. 相手方への通知:相手方に参加の意思を確認(任意参加)
  3. 調停人の選任:当事者の合意または機関による選任
  4. 調停期日:通常3〜5回程度の期日で審理
  5. 解決案の提示:調停人が解決案を提示
  6. 合意成立/不成立:合意すれば和解契約を締結

所要期間

調停の場合、申立てから解決まで3〜6か月が目安である。訴訟(14〜18か月)と比較して大幅に短縮される。


仲裁の特徴と手続

仲裁合意

仲裁を利用するには、当事者間に仲裁合意が必要である。仲裁合意は通常、ライセンス契約等に仲裁条項として盛り込まれる。

仲裁手続の流れ

  1. 仲裁申立て
  2. 仲裁人の選任(1名または3名)
  3. 主張書面の交換
  4. 証拠調べ・口頭審理
  5. 仲裁判断

仲裁判断の効力

仲裁判断は確定判決と同一の効力を有し(仲裁法45条)、原則として不服申立てができない。また、ニューヨーク条約により外国での執行も可能であるため、国際的な特許紛争において特に有効である。


ADRのメリットとデメリット

メリット

メリット詳細
迅速性訴訟の半分以下の期間で解決可能
低コスト弁護士費用・手続費用ともに訴訟より低廉
秘密性手続・結果が非公開(訴訟は原則公開)
柔軟性クロスライセンス等、訴訟では困難な解決策が可能
関係維持取引関係の継続を前提とした解決が可能
専門性技術に精通した調停人・仲裁人が担当

デメリット

デメリット詳細
強制力の限界調停は相手方の参加が任意(拒否される場合がある)
判例としての価値非公開のため先例的価値がない
差止めの限界仲裁判断で差止命令を出すことの有効性に議論あり
控訴不可仲裁判断に不服があっても原則覆せない

ADRと訴訟の費用比較

項目ADR(調停)ADR(仲裁)訴訟(第一審)
手続費用10万〜50万円50万〜200万円1万〜150万円
弁護士費用50万〜200万円100万〜500万円500万〜3,000万円
期間3〜6か月6〜12か月14〜18か月
合計目安60万〜250万円150万〜700万円500万〜3,000万円超

ADRが適している特許紛争のケース

  1. ライセンス契約のロイヤリティ交渉:金額の調整が主たる争点の場合
  2. 国際紛争:複数国にまたがる紛争で統一的な解決を求める場合
  3. 取引先との紛争:ビジネス関係の維持が重要な場合
  4. 秘密性が重要な紛争:技術の詳細を公開したくない場合
  5. 中小企業の紛争:訴訟費用の負担が大きい場合

まとめ

ADRは、特許紛争を迅速・低コスト・非公開で解決できる有効な手段である。特に国際的な紛争や取引関係の維持が重要なケースでは、訴訟よりも適した解決方法となり得る。ライセンス契約に仲裁条項を盛り込んでおくことで、将来の紛争に備えることも可能である。訴訟だけが選択肢ではないことを認識し、事案に応じた最適な紛争解決手段を選択すべきである。

関連記事

他の記事も読んでみませんか?

PatentMatch.jpでは、特許活用に関する実践的な情報を多数掲載しています。