この記事のポイント
特許権の共有持分の売却における法的留意点と実務を解説。PatentMatch.jpがお届けします。
はじめに
特許権は複数の共有者が持分を持つことができます。共有特許の一部持分を第三者に売却する「部分譲渡」は、特許法上の特有の制約があるため、注意が必要です。
共有特許の基本ルール
特許法73条により、共有特許権には以下のルールがあります。
| 行為 | 共有者全員の同意 |
|---|---|
| 自己実施 | 不要(別段の定めがない場合) |
| 持分の譲渡 | 必要 |
| ライセンスの許諾 | 必要 |
| 質権の設定 | 必要 |
| 特許権の放棄 | 必要 |
部分譲渡の手続き
ステップ1:共有者全員の同意取得
持分を譲渡するには、他のすべての共有者の同意が必要です。同意が得られない場合は、原則として持分の譲渡はできません。
ステップ2:譲渡契約の締結
譲渡する持分の割合、対価、バックライセンスの有無などを契約書に明記します。
ステップ3:特許庁への移転登録
特許権の持分の移転は、特許庁に対して移転登録申請を行うことで効力が生じます。
部分譲渡の評価方法
共有持分の価値は、特許全体の価値に持分割合を乗じた金額を基準とするのが一般的ですが、実際には共有の制約を考慮したディスカウントが適用されることが多いです。
共有ディスカウントの要因
- 自由な処分が制約される(他の共有者の同意が必要)
- ライセンス許諾に他の共有者の同意が必要
- 共有者間の利害対立リスク
- 管理の煩雑さ
一般的に、共有ディスカウントは10〜30%程度とされています。
実務上の注意点
共有契約の確認
既存の共有契約(共同出願契約など)に、持分譲渡に関する特別な定めがないか確認します。事前承諾条項や優先買取権が設定されている場合があります。
譲渡先の適格性
共有者が懸念する譲渡先(競合他社など)への譲渡は、同意が得られにくい場合があります。譲渡先の選定には共有者の意向も考慮しましょう。
実施条件の再設定
新たな共有者が加わることで、各共有者の実施条件を再設定する必要がある場合があります。
費用負担の取り決め
特許維持年金や訴訟費用の分担割合を、新たな持分比率に応じて再設定します。
共有を解消する代替手段
- 他の共有者に持分を買い取ってもらう
- 共有者全員で第三者に全体を売却する
- 分野別に実施権を分割して共有を解消する
まとめ
特許の部分譲渡は法的な制約が多いものの、適切に対応すれば共有特許の価値を実現する手段となります。共有者間の良好な関係維持と、専門家のサポートが成功の鍵です。