この記事のポイント
特許売却における表明保証条項を解説。売り手が保証すべき事項、買い手が確認すべき事項、補償条項の設計、実務上の注意点を紹介します。
表明保証とは
表明保証(Representations and Warranties)は、特許売却契約において売り手が買い手に対して特許に関する一定の事実を保証する条項です。保証した事実が真実でなかった場合、売り手は買い手に対して補償責任を負います。
M&A契約では一般的な条項ですが、特許売却においても取引のリスク配分の要として重要な役割を果たします。
売り手の主な表明保証事項
1. 権利の有効性と帰属
- 特許が有効に存続していること
- 売り手が特許の正当な権利者であること
- 共有者がいる場合はその情報が正確であること
- 第三者に譲渡されていないこと
2. 年金・維持費の納付
- すべての年金が適切に納付されていること
- 特許の失効や消滅がないこと
3. 訴訟・紛争の不存在
- 対象特許に関する訴訟が係属していないこと
- 無効審判や異議申立が提起されていないこと
- 第三者から侵害の警告を受けていないこと
4. ライセンスの状況
- 既存のライセンス契約の内容が正確に開示されていること
- 独占ライセンスが付与されている場合はその旨を開示
5. 発明者の権利処理
- 発明者から適切に権利を承継していること
- 職務発明の対価が適切に支払われていること
買い手が注意すべきポイント
表明保証の範囲
「売り手の知る限りにおいて」という限定句(Knowledge Qualifier)が付されている場合、売り手の保証範囲が限定されます。重要な事項については、限定句なしの保証を求めることを検討しましょう。
補償条項(Indemnification)
表明保証に違反があった場合の補償条項を確認します。
- 補償の上限額(通常は売却価格を上限とする)
- 補償請求の期限(サバイバル期間)
- 免責金額(デミニマス/バスケット)
損害の範囲
補償の対象となる損害の範囲(直接損害のみか、間接損害を含むか)を明確にします。
表明保証保険
大規模な特許取引では、表明保証保険(R&W Insurance)を活用することで、売り手のリスクを保険会社に移転することが可能です。買い手側で付保するケースも増えています。
実務上の注意点
- デューデリジェンスで発見された問題は、表明保証の例外として契約書に記載する
- 表明保証の内容は、対象特許の特性に応じてカスタマイズする
- 売り手は、保証できる範囲を事前に精査し、過大な保証を避ける
- 買い手は、重要な事項について表明保証に頼りすぎず、独自のデューデリジェンスを徹底する
まとめ
表明保証条項は、特許売却におけるリスク配分の要です。売り手は保証できる範囲を慎重に検討し、買い手は必要な保証を適切に要求することで、双方にとって公正な取引を実現しましょう。