特許の世界には独特の専門用語が数多く存在します。初めて特許出願に取り組む発明者や、知財部門と連携するエンジニアにとって、これらの用語を正しく理解することが円滑なコミュニケーションの第一歩です。本記事では、出願・審査・登録の各フェーズに分けて重要用語50を体系的に整理しました。
出願フェーズの用語(用語1〜18)
基本的な出願関連用語
| # | 用語 | 読み | 意味 |
|---|
| 1 | 発明 | はつめい | 自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの(特許法第2条) |
| 2 | 出願人 | しゅつがんにん | 特許庁に特許出願を行う者。法人・個人いずれも可 |
| 3 | 発明者 | はつめいしゃ | 発明を実際に行った自然人。法人は発明者になれない |
| 4 | 明細書 | めいさいしょ | 発明の内容を詳細に記載した書面。実施可能要件を満たす必要がある |
| 5 | 特許請求の範囲 | とっきょせいきゅうのはんい | 特許権の保護範囲を定める書面。クレームとも呼ばれる |
| 6 | 要約書 | ようやくしょ | 発明の概要を400字以内で記載した書面 |
| 7 | 図面 | ずめん | 発明の構造や動作を示す図。原則任意だが実務上ほぼ必須 |
| 8 | 優先日 | ゆうせんび | 国内優先権またはパリ条約優先権の基礎となる出願日 |
| 9 | 出願日 | しゅつがんび | 特許庁に出願書類が受理された日 |
出願の種類に関する用語
| # | 用語 | 読み | 意味 |
|---|
| 10 | 分割出願 | ぶんかつしゅつがん | 一つの出願から一部の発明を分離して新たに出願すること |
| 11 | 変更出願 | へんこうしゅつがん | 実用新案登録出願や意匠登録出願を特許出願に変更すること |
| 12 | 国内優先権主張出願 | こくないゆうせんけんしゅちょうしゅつがん | 先の出願を基礎として改良発明等を追加し、新たに出願すること |
| 13 | PCT国際出願 | ぴーしーてぃーこくさいしゅつがん | 特許協力条約に基づき一つの出願で複数国に出願効果を得る制度 |
| 14 | 仮出願 | かりしゅつがん | 米国特許法における簡易出願。日本には同等制度なし |
| 15 | 公開公報 | こうかいこうほう | 出願日から1年6か月後に公開される出願内容を記載した公報 |
| 16 | 出願公開 | しゅつがんこうかい | 出願された発明を公衆に公開する制度(特許法第64条) |
| 17 | 早期公開 | そうきこうかい | 出願人の請求により1年6か月を待たずに公開する制度 |
| 18 | 補正 | ほせい | 出願書類の記載を修正すること。新規事項の追加は不可 |
審査フェーズの用語(用語19〜35)
審査請求から拒絶理由まで
| # | 用語 | 読み | 意味 |
|---|
| 19 | 審査請求 | しんさせいきゅう | 出願日から3年以内に行う実体審査の請求。請求なければ出願は取り下げとみなされる |
| 20 | 早期審査 | そうきしんさ | 一定要件を満たす出願について審査を前倒しする制度 |
| 21 | スーパー早期審査 | すーぱーそうきしんさ | 早期審査よりさらに迅速な審査。実施関連出願等が対象 |
| 22 | 審査官 | しんさかん | 特許庁において出願を審査する専門職員 |
| 23 | 拒絶理由通知 | きょぜつりゆうつうち | 審査官が特許要件を満たさないと判断した場合に発する通知 |
| 24 | 意見書 | いけんしょ | 拒絶理由に対する出願人の反論書面 |
| 25 | 手続補正書 | てつづきほせいしょ | 出願書類の記載を修正する書面 |
| 26 | 新規性 | しんきせい | 出願前に公知でないこと(特許法第29条第1項) |
| 27 | 進歩性 | しんぽせい | 当業者が容易に発明できないこと(特許法第29条第2項) |
| 28 | 産業上の利用可能性 | さんぎょうじょうのりようかのうせい | 産業において利用できること |
審査結果に関する用語
| # | 用語 | 読み | 意味 |
|---|
| 29 | 拒絶査定 | きょぜつさてい | 特許要件を満たさないとする最終判断 |
| 30 | 拒絶査定不服審判 | きょぜつさていふふくしんぱん | 拒絶査定に不服がある場合に請求する審判 |
| 31 | 前置審査 | ぜんちしんさ | 審判請求と同時に補正がされた場合に審査官が再審査する手続 |
| 32 | 先行技術調査 | せんこうぎじゅつちょうさ | 出願前に類似技術を調べること。先行技術文献調査とも |
| 33 | 引用文献 | いんようぶんけん | 審査官が拒絶理由の根拠として挙げる先行文献 |
| 34 | 当業者 | とうぎょうしゃ | その技術分野において通常の知識を有する者 |
| 35 | 実施可能要件 | じっしかのうようけん | 明細書の記載から当業者が実施できる程度に明確であること |
登録フェーズの用語(用語36〜50)
登録・権利維持に関する用語
| # | 用語 | 読み | 意味 |
|---|
| 36 | 特許査定 | とっきょさてい | 審査の結果、特許要件を満たすと判断されること |
| 37 | 設定登録 | せっていとうろく | 特許料の納付により特許権が発生すること |
| 38 | 特許公報 | とっきょこうほう | 登録された特許の内容を記載した公報 |
| 39 | 特許番号 | とっきょばんごう | 登録時に付与される固有番号 |
| 40 | 存続期間 | そんぞくきかん | 特許権の有効期間。出願日から20年 |
| 41 | 年金 | ねんきん | 特許権を維持するために毎年納付する特許料(年金) |
| 42 | 権利消滅 | けんりしょうめつ | 年金未納等により特許権が消滅すること |
| 43 | 実施権 | じっしけん | 特許発明を業として実施できる権利 |
| 44 | 専用実施権 | せんようじっしけん | 設定行為で定めた範囲で独占的に実施できる権利 |
| 45 | 通常実施権 | つうじょうじっしけん | 特許発明を実施できる非独占的な権利 |
| 46 | 特許原簿 | とっきょげんぼ | 特許権に関する情報を記録する公的簿冊 |
| 47 | 移転登録 | いてんとうろく | 特許権の譲渡を特許原簿に登録すること |
| 48 | 訂正審判 | ていせいしんぱん | 登録後に明細書等を訂正するための審判 |
| 49 | 特許異議申立て | とっきょいぎもうしたて | 特許公報発行日から6か月以内に第三者が行う異議 |
| 50 | 無効審判 | むこうしんぱん | 特許を遡及的に無効とするための審判 |
用語を効率的に覚えるためのヒント
フェーズごとに整理する
特許用語は手続の流れに沿って覚えるのが最も効率的です。
- 出願準備 → 発明の整理、先行技術調査
- 出願 → 明細書・クレーム・図面の作成
- 審査 → 審査請求、拒絶理由対応
- 登録 → 特許料納付、権利維持
実務で頻出する略語
| 略語 | 正式名称 | 意味 |
|---|
| OA | Office Action | 拒絶理由通知の英語表現 |
| IDS | Information Disclosure Statement | 情報開示陳述書(米国) |
| FA | First Action | 最初の拒絶理由通知 |
| RCE | Request for Continued Examination | 継続審査請求(米国) |
まとめ
特許用語の理解は、知財戦略の第一歩です。本辞典で基礎用語を押さえたうえで、訴訟編・国際編・ライセンス編もあわせて参照し、包括的な知識を身につけてください。不明な用語が出てきた場合は、特許法の条文番号とセットで覚えると正確な理解につながります。