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特許訴訟に関する重要な法律用語を体系的に解説。侵害・無効・差止など、紛争対応に必須の用語辞典。
特許紛争は企業経営に大きなインパクトを与えます。訴訟の場面では日常では使わない法律用語が飛び交い、正確な理解がなければ適切な判断を下せません。本記事では、特許訴訟に関わる法律用語を「侵害の種類」「訴訟手続」「差止・損害賠償」「無効・防御」の4分野に分けて解説します。
侵害に関する用語
侵害の類型
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 文言侵害 | 特許請求の範囲の文言に直接該当する侵害 |
| 均等侵害 | 文言上は異なるが実質的に同一技術と認められる侵害。最高裁ボールスプライン事件判決で5要件が確立 |
| 間接侵害 | 特許発明の実施にのみ使用する物の製造・販売等(特許法第101条) |
| 直接侵害 | 特許発明を正当な権原なく業として実施すること |
| 誘引侵害 | 他者に侵害行為を教唆・誘引する行為(主に米国特許法§271(b)) |
| 寄与侵害 | 侵害に用いられる部品等を提供する行為(米国特許法§271(c)) |
均等論の5要件(ボールスプライン事件判決)
均等侵害が認められるためには、以下の5要件をすべて満たす必要があります。
- 非本質的部分 — 異なる部分が特許発明の本質的部分でないこと
- 置換可能性 — 異なる部分を置き換えても同一の作用効果を奏すること
- 置換容易性 — 侵害品の製造時に置換が容易であったこと
- 非公知技術 — 侵害品が出願時の公知技術と同一でないこと
- 意識的除外なし — 出願手続で意識的に除外されたものでないこと
訴訟手続に関する用語
裁判手続の流れ
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 管轄 | 事件を処理する権限を有する裁判所。特許訴訟は東京地裁・大阪地裁の専属管轄 |
| 訴状 | 訴えを提起するための書面 |
| 答弁書 | 被告が訴状に対して最初に提出する書面 |
| 準備書面 | 当事者が主張を記載して提出する書面 |
| 弁論準備手続 | 争点を整理するための非公開手続 |
| 技術説明会 | 裁判官に技術内容を説明するための手続 |
| 証拠保全 | 証拠が滅失・改変されるおそれがある場合に証拠を確保する手続 |
| 文書提出命令 | 裁判所が当事者に文書の提出を命じる決定 |
| 秘密保持命令 | 営業秘密を含む訴訟資料の開示を制限する命令(特許法第105条の4) |
訴訟における専門用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 立証責任 | 事実の存在を証明する責任。侵害の立証は原告が負う |
| クレーム解釈 | 特許請求の範囲の技術的意味を確定する作業 |
| 出願経過禁反言 | 出願手続で限定した内容に反する権利主張が制限される原則 |
| 技術的範囲 | 特許権の保護が及ぶ技術的な範囲 |
| 判定制度 | 特許庁に技術的範囲の判断を求める制度(特許法第71条) |
| イ号物件 | 侵害が疑われる製品・方法を指す訴訟上の呼称 |
差止・損害賠償に関する用語
救済手段
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 差止請求 | 侵害行為の停止を求める請求(特許法第100条第1項) |
| 廃棄除却請求 | 侵害品の廃棄や侵害設備の除却を求める請求(同条第2項) |
| 損害賠償請求 | 侵害により生じた損害の賠償を求める民事請求 |
| 不当利得返還請求 | 侵害者が不当に得た利益の返還を求める請求 |
| 信用回復措置 | 侵害により失った信用の回復に必要な措置を求める請求(特許法第106条) |
損害額の算定方法
特許侵害の損害額は、以下の3つの方法で算定されます。
| 算定方法 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 逸失利益(第102条第1項) | 特許法第102条第1項 | 侵害品の販売数量×権利者の単位利益 |
| 侵害者利益(第102条第2項) | 特許法第102条第2項 | 侵害者が侵害により得た利益を損害額と推定 |
| 相当実施料額(第102条第3項) | 特許法第102条第3項 | 実施料相当額を損害額とする |
無効・防御に関する用語
無効関連用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 無効審判 | 特許を遡及的に無効とする審判(特許法第123条) |
| 無効の抗弁 | 訴訟において特許が無効であると主張する防御方法(特許法第104条の3) |
| キルビー抗弁 | 無効の抗弁の旧称。最高裁キルビー事件判決に由来 |
| 訂正の再抗弁 | 無効の抗弁に対し、訂正により無効理由が解消されると主張すること |
| 進歩性欠如 | 無効理由の中で最も頻出する理由。当業者が容易に発明できたとする主張 |
| 新規性欠如 | 出願前に公知であったとして無効を主張する理由 |
| 記載不備 | 明細書の記載が不十分であるとして無効を主張する理由 |
防御・和解に関する用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 先使用権 | 出願前から独自に実施していた者に認められる実施権(特許法第79条) |
| 試験研究の例外 | 試験・研究目的の実施は侵害とならない(特許法第69条第1項) |
| 権利消尽 | 適法に流通した特許製品について権利が消尽する原則 |
| 和解 | 当事者間の合意により訴訟を終了させること |
| 調停 | 第三者の仲介により紛争を解決する手続 |
| 仲裁 | 仲裁人の判断に従うことに合意して紛争を解決する手続 |
実務で役立つ訴訟用語チェックリスト
特許紛争に直面した場合、以下のチェックポイントを確認してください。
- 侵害の有無 — クレーム解釈を行い、文言侵害・均等侵害の該当性を検討
- 証拠の確保 — 侵害品の購入、ウェブサイトのスクリーンショット保存
- 損害額の見積もり — 3つの算定方法のうち最も有利な方法を選択
- 無効リスクの評価 — 自社特許の有効性を再確認
- 和解の可能性 — 訴訟コストと和解条件の比較検討
まとめ
特許訴訟の用語は専門性が高く、誤解が致命的な判断ミスにつながりかねません。本辞典を参考書として手元に置き、弁護士・弁理士との打合せの際に活用してください。基礎編・国際編・ライセンス編もあわせて参照することで、知財用語の体系的な理解が深まります。